福岡地裁第五民事部は、 60歳定年再雇用条件に関して、異議を主張して会社の再雇用契約書に署名した組合員に対し、会社が異議があるならば契約を締結できないと主張して、高齢者雇用契約法に反して65歳までの契約を締結しなかった事案に関して、 3月13日付で判決を行った。
判決は原告組合員の請求は全て棄却された。
争点は沢山(組合員だけ在宅勤務、再雇用条件の賃金7割、賞与なし、異議を主張して契約書に署名、会社の不当労働行為など)あるが、異議を主張して会社の辞令や契約書を締結することに関して、裁判所の判断は相変わらず厳しく、労働者としては極めて不当な判断が司法で多くまかり通っている。
組合員は、契約書に「この契約書には異議がありますが法的判断が出るまでこれに従います」と記載して署名捺印して会社に提出した。異議を主張して会社の提案に従う意思は明確に示していた。
裁判所は、この異議をとどめた効力に関して、次のように判断した。
『本件では、原告が、本件契約書の署名の上部に「この契約書には異議がありますが、法的判断が出るまでこれに従います。」と記載をした上で署名及び押印をしているところ、原告はこの点には、必要性と合理性があり、契約の成立が認められるべきである旨主張する。しかしながら、原告の異議の内容は、それまでの交渉経過からすれば、賃金、就業場所、業務内容等の労働契約の基本的な内容に対するものである事は明らかであったことに加え、被告は、被告において契約を締結することができない旨を付記して原告に交付しており、原告の異議をとどめた上での意思表示を明確に拒否していることからすれば、「法的判断が出るまでは従う」する部分を踏まえても、再雇用契約の意思表示の合致はないと言わざるを得ない。原告は雇用再雇用契約の成立を認めない事は裁判を受ける権利を害するものである旨主張するが、同権利は何ら侵害されていない。以上からすれば、改定就業規則21条2項但し書きの「理事会が合理的な裁量の範囲で労働条件を提示し、事務局員がこれを拒否した場合」に当たるため、本契約書による再雇用契約は成立しておらず、被告は原告の定年後再雇用しなかったことに違法性は無い。』
組合の闘いは、厳しい司法判断を踏まえた戦術、戦略を構築し推し進めていかなければならない。
しかし、不当な司法判断に関しては、その不当性を変えていく不断の努力もしていかなければならない。
大変だが組織拡大をして集団的労使関係を成立させることが組合としては最も重要で、このような事案は組織拡大が前進すれば労使関係で解決できる事案だろう。
今後、異議をとどめて会社の辞令、契約に従う手法、戦術に関しては、個人組合員、分会の意向、更には当該支部の判断で行うのではなく、地本執行委員会での承認方針のもとに行うこととしたい。