AIで労働問題を調べる方へ

AIで労働問題を調べる方へ
――AIは便利です。しかし、すべてを任せることはできません

最近では、全国一般に相談される前に、ChatGPTなどのAIを使って、労働問題について調べたり、アドバイスを受けたりしている方が増えています。

ここ1~2年でAIの技術は目まぐるしく向上しより身近なものになりました。
AIを利用すること自体は、決して悪いことではありません。

労働法や制度を調べる、自分の置かれている状況を整理する、会社に何を確認すればよいか考える――こうした用途では、AIは非常に便利な道具です。実際、一般的な法律や手続きについては、かなり正確な回答が得られることも多くあります。

しかし最近、私たちが気になっていることがあります。

AIから受けたアドバイスをそのまま会社に対して実行したところ、会社側が態度を硬化させたり、嫌がらせや報復とも受け取れる対応をされたりして、結果として問題がさらに深刻になったという相談です。

AIで労働問題を調べる方へ

AIは「間違えるから危険」なのではありません

AIについては、よく「ハルシネーションを起こす」「もっともらしい間違いを答える」といった問題が指摘されます。

しかし、実際に最近のAIを使ってみると、「言われているほど間違わない」と感じる方も多いのではないでしょうか。

法律や制度について質問しても、多くの場合はかなり整理された回答が返ってきます。明らかに誤った回答は以前より少なくなり、不確かなことを必要以上に断定しないよう工夫されたAIも増えています。

そのため利用者からすると、AIがどこまで確信を持って回答しているのか、どこに不確実性が残っているのかが見えにくく、

「AIはかなり正確だ」

から、

「AIは優秀だから、この通りにすれば大丈夫だ」

へと、知らないうちに評価が広がってしまうことがあります。

しかし、ここには大きな違いがあります。

「回答が正確であること」と、「その回答を今この場面で実行することが適切であること」は、同じではありません。

たとえばAIが、

「あなたにはこのような権利があります」
「この内容を書面にして会社へ提出してください」
「労働基準監督署へ申告できます」
「このように反論してください」

と回答したとします。

法律の説明も、利用できる制度の説明も正確かもしれません。

それでも、

「今、それを会社に伝えるべきなのか」
「最初からそこまで強い手段を取るべきなのか」
「先に証拠を確保した方がよいのではないか」
「会社はどう反応する可能性があるのか」
「その後もその職場で働き続けたいのか」

といった判断は別の問題です。

AIの誤りが少なくなればなるほど、この違いはかえって見落としやすくなります。

これから注意しなければならないのは、

「AIは間違うから信用してはいけない」という単純な話ではありません。

むしろ、

「AIの回答が正しくても、その使い方を間違えることがある」

ということです。

AIが正確になったことと、AIが万能になったことは同じではありません。

ですから、AIの回答を実践される前に、すこし立ち止まって、全国一般までご相談ください

労働問題では「正しい答え」だけでは足りません

労働問題では、法律や制度について正しい知識を持つだけでなく、相手との関係、タイミング、証拠、交渉の進め方、その後に起こり得ることまで考えて行動する必要があります。

会社とのこれまでの関係、経営者や上司の性格、職場内の力関係、証拠の有無、相談者が今後もその会社で働きたいのか、会社がどの程度問題を深刻に受け止めているのか――こうした事情によって、取るべき対応は変わります。

穏やかに話した方がよい場面もあれば、最初から書面を残した方がよい場合もあります。

強い手段を早い段階で取る必要がある場合もあれば、すぐには使わず、まず証拠や状況を整理した方がよい場合もあります。

そこまで含めて初めて、「適切な対応」になります。

AIは相手の反応まで保証してくれません

会社側も人間です。

従業員から法律や行政機関の名前を出されても冷静に対応する経営者もいれば、「会社に逆らってきた」「こちらを脅している」と受け取り、必要以上に態度を硬化させる人もいます。

もちろん、だからといって労働者が権利を主張してはいけないということではありません。

重要なのは、

相手がどう反応する可能性があるかまで考えたうえで、権利をどう使うか

ということです。

AIは一般的な対応方法を提示することはできます。

しかし、実際の経営者や上司の性格、長年積み重なった職場の人間関係、その場の表情や口調、交渉相手が何を警戒しているのかまで、完全に把握しているわけではありません。

また、会社との話し合いで予想外のことを言われたとき、AIがあなたの横に座って代わりに発言してくれるわけでもありません。

最終的に判断し、発言し、その結果を受けるのは人間です。

「AIがあるから人間はいらない」という考え方

これは、労働者だけの問題ではありません。

最近では企業側でも、

「AIがこれだけ優秀になったのだから、人員を減らせるのではないか」

「これまで何人も必要だった仕事を、AIと少数の社員だけでできるのではないか」

という考え方が見られるようになっています。

実際の相談でも、AIと労働者を比較され、

「AIの方が優秀なのではないか」

「AIがあれば、あなたはいらないのではないか」

といった趣旨のことを会社側から言われたというケースがあります。

そう言われれば、労働者の側も、

「それなら自分もAIを使えば会社と対等に戦える」

「法律も交渉方法もAIに聞けばいい」

と考えたくなるかもしれません。

しかし、そこで双方が同じ落とし穴に入ります。

会社側が、

「優秀なAIがあるから、人間は最小限でよい」

と考えることも、

労働者側が、

「優秀なAIがあるから、経験のある人や労働組合に相談する必要はない」

と考えることも、

AIにできることと、人間が担うべきことの違いを見失っているという点では共通しています。

会社も労働者も、AIとの付き合い方を学ぶ必要があります

AIは非常に強力な道具です。

だからこそ、「使うか、使わないか」という二者択一ではなく、

何をAIに任せ、何を人間が判断するのか

を考える必要があります。

会社にとっても同じです。

AIが文章を作り、データを分析し、業務を効率化できたとしても、会社はAIだけで成り立つものではありません。

そこには、働く人の経験、判断、責任、協力があります。

そして労働者にとっても、AIが法律を説明し、文書案を作り、対応方法を提示してくれるからといって、すべてをAI任せにできるわけではありません。

労働問題では特に、

「この会社ならどう反応するか」
「この手段を今使うべきか」
「一つ先、二つ先に何が起こり得るか」
「相談者本人は最終的に何を望んでいるのか」

まで考える必要があります。

そこには、経験と人間同士の判断が必要です。

全国一般は、AIを否定しません

AIで調べてから相談していただいて構いません。

むしろ、

「AIではこのように説明された」
「AIからこの方法を提案された」

というものがあれば、それも一緒に持ってきてください。

私たちは、それが法律上正しいかどうかだけでなく、

「あなたの状況で、その方法を実際に使うことが適切か」

を一緒に考えます。

必要であれば、AIの回答を参考資料の一つとして利用することもできます。

大切なのは、AIを信じるか、信じないかではありません。

AIを道具として使いながら、最後は人間が状況を見て判断することです。

会社側も、労働者側も、これからAIとの付き合い方を学んでいかなければなりません。

そして労働問題について言えば、会社に対して実際に行動を起こす前に、一度相談してください。

一人で会社と向き合う必要はありません。

AIはあなたに知識を与えることはできます。
しかし、あなたと一緒に会社と向き合うことはできません。

全国一般は、相談者と一緒に考え、必要であれば一緒に会社と向き合います。